BGM : ケツメイシ − 夏の思い出
「ほな、解散っ!」
先輩の一人が告げた。
お疲れ様。集まったメンバーが散り散りになっていく。アルバイトに行く連中。借り物を返しに行く先輩。皆、それぞれの予定が残っている。私を含んだ数人は、まだ余韻を味わうようにその場に留まっている。
六時間に渡るそれは、まさに祭と言えた。
八月三十一日。世間では夏休みの最後と、ある者は楽しかった出来事を振り返り、またある者は溜まった宿題を片付けながら、ある者は新学期を待ちわびる一日。
そんな日に、私たちは集まった。十二人という大人数だ。
向かう先はやはり、海。
もう人もあまり居らず、クラゲが漂う。
風が強い。潮の味がする風が十二人を迎えた。
組み立てられる装置。バーベキューセットだ。
広げられる巨大なブルーシート。五畳分ぐらいはあるだろう。
騒ぎ、笑い、駆け、食い、そしてまた笑った。
浜辺のバーベキュー大会。大音量で鳴るラジカセ。
暴れる十二人。その様子は、周囲から見ればかなり浮いていたかもしれない。
けれどそれは私たち十二人にとって最高の時間だった。
面倒な荷物の片付けだって楽しかった。卑猥な言葉で笑いあった。
帰りの車内は元気だった。みんな叫んで歌っていた。
もう、この十二人で海に来ることはないだろうな。
不意にそんなことを思った。
吹き付ける風が強くなった気がした。